「スリープウォーカーまーず」うらすじ解説

最近多忙でなかなか書けなかったけど、ようやく落ち着いたので書いてみた。

相変わらずHOUSEはプレイヤーに想像させる部分が多すぎやで。
全部見終わっても消化不良になっちゃうよどうしよ...
という時のための解説だゾ。

ただし個人的な解釈いっぱいなので、鵜呑みにしてはいけない。(戒め)
また、多分にネタバレ要素を含むため、まだ視聴していない兄貴は閲覧注意だぜ。


これは夢なのか現実なのか

引き続きゲーム中で明確に回答が出ているわけではないが、
前回のルールを引き継ぐとすれば、
ゲーム中の世界は「夢の世界」であると推測できる。
しかも、まりな(Tabby)編と違って悪夢の世界ではなく、
まーず(Melody)編は、「まーず自身の臨死体験」のようである。
その根拠は以下の通り。


根拠1:まりな編でまーずの縊死描写がある
 ほんへを一通り見ればわかることではあるが、
 まーず編はまりな編で真ENDを迎えた後の話となっている。
 まーず編の前日譚たるまりな編で、
 本来なら生きているはずのまーずが縊死する(した)姿を度々目撃するというのは、
 何の理由もなしに生まれた光景ではないだろう。

 他の家族もそうだが、これはまりなのトラウマを反映した姿であると推測できる。
 つまり、まーずはまりなが見ている側で自殺を図った可能性が高い。
 自殺を図ったと仮定した上で、エンディングでまーずが生存したのだとすれば、
 その後で奇跡的に一命を取り留めたものと推測できる。
 つまり、まーず編は、まーずが今際の際に見た夢(=臨死体験)と考えられるのだ。

 

根拠2:まりな以外の家族が霊体として登場する
 まりな編では非常に影の薄かったバッチャマを含め、
 まりな以外の家族、およびTobyくんが霊体として登場している。
 しかも、エンディングでバッチャマを除き、
 まーずの守護霊になるというオチ付きである。

 これはいわゆる、臨死体験にありがちなネタの一つで、
 「向こう岸に渡るとこだったけど、死んだ家族が止めるので戻ってきた」という
 夢オチの一種と取ることができる。

 

根拠3:変態糞親父(Jizo)の発言
 些か強引なキャラ改変によって原型すら残らなくなった変態糞親父だが、
 オリジナルのキャラクター名はJizoというらしい。(Wikiより)
 登場時の発言によれば、「迷える魂を導き、次の輪廻に連れて行く」とのことで、
 腰に付けた顔から、既にTobyくんが犠牲になっていることがわかる。

 実は、コイツの目的は地蔵の名の通り、迷える魂の救済である。
 ほんへにおいては、自殺を図って生死の境にあるまーずの魂の救済が目的であり、
 これはまーず自身の魂が肉体から遊離しつつあることの表れと考えられる。
 言動やキャラ改変のせいで怪異サイドに取られがちだが、
 実は悪霊や怪異などとは関係ない存在で、
 死相姉貴よりはYDDRNRM姉貴の仲間というのが最も適切な説明であろう。
 和装なのもむべなるかな。


どこまでが夢なのか

夢の中でお互いの魂が結びついたせいかもしれないが、
元々この姉妹、夢と現実の境界が曖昧になっており、
またゲーム内でも明確な境界を描写していないため、
どこまでは夢でどこからが現実なのかは、結構悩ましいところである。
強いて答えを挙げるなら、まりなを助けて脱出するまでが夢(臨死体験中)の世界、
それ以降が現実説を取りたい。

 

根拠1:天候が変わっている
 ほんへではゲーム全体を通して雨が降り続いているが、
 まりな編真ENDとまーず編クリア時のみ、雨が止んでいる描写がある。
 天候が姉妹の心理状態を表しているとすれば、
 雨が止んだシーンは姉妹にとって重要な転機であり、
 シチュエーションが大きく変わったポイントであると考えられる。

 

根拠2:外の描写がある

 同様に、エンディング時のみ外の描写があり、
 屋敷から外に出た=屋敷の呪いから解き放たれた=悪夢から解放された
 と解釈できる。
 窓から覗いている隣人については、姉妹または屋敷の守護霊のようなものなので、
 外部の存在とは言い難いところがある。

 

とは言え、エンディングが夢と現実の境界説も、些か根拠に欠けるところがある。
クリア後の部屋に隣人が登場していることや、窓から雨の降る様子が伺えることから、
クリア後の部屋は、姉妹の精神的な安息所とも考えられる。
エンディング後も姉妹は夢の中にいる可能性も否定はできない。


何故頭ばかり狙われるのか

ゲーム中でのまーずの死亡パターンは、実に9種類のうち3種類が顔面へのダメージ、
2パターンが絞首による死亡となっている。
これも全く理由がないわけではないようだ。
おそらく自身の状況に関係があるものと推測できる。

 

①首吊り自殺を図った説
 『自殺を図って奇跡的に一命を取り留めた』説に基づく推論ではあるが、
 まーず死亡パターンに絞首が2種類あるのは、自身の記憶によるものと思われる。
 昏睡状態にあっても、
 当人の気持ちは自殺を図った当時から変わっていないのかもしれない。
 あるいは、罪悪感が自分自身を責め苛んでいることの表れとも考えられる。

 

②肉体と魂が遊離しつつある
 顔というのは、個人を識別するための重要な要素である。
 それを失うということは、魂が肉体から遊離しつつあることの象徴と言える。
 (Jizoに殺されるパターンはまさにそれを示している)

 

 昏睡状態が続くことで、体が衰弱しつつあることの暗喩でもありそうだ。
 幸いなことに、まーず自身はまだ若く、
 生存本能のためか、あるいは本心では生きたいからなのかまでは分からないが、
 度々顔を失っても、魂は肉体に結びついたままとなっている。
 結果として、まりなを助けて悪夢から脱出することに成功するのだが、
 悪夢から脱出できないままだと、いつか死を受け入れてしまうものと思われる。


姉妹の違い

バッチャマの評価によれば、
まりなは「アホの子で粗暴、後先考えず行動する傾向がある」
まーずは「芸術家肌だが繊細かつ弱気、自分からはあまり行動を起こさない」
とのこと。
どちらかと言えばまーずの方がバッチャマとの仲は良かったようであり、
些かバッチャマの主観的な評価ではあるが、姉妹の性格の差、
2人の性格の差による世界の差が随所に見られる。
その差のいくつかを取り上げてみよう。

 

①見えている世界の違い
 まりな編・まーず編両方をプレイした限り、
 まーずの方が現実に近い物の見方をしており、
 まりなの方があまり現実が見えていないように感じる。
 言い方を変えると、
 まりなは家族の明るい面、まーずは家族の暗い面に通じているように見える。
 特に顕著なのがまーずの部屋の描写だろうか。

 まりな編では何もなかった部屋だが、
 まーず編の場合、箱が開いており、鞭と思しき物体が散らばっているのが伺える。
 これはまーずのみが父から虐待を受けていた可能性を示唆している。
 まりな編では箱が閉じている上、まーずが部屋にいる間は箱の上に座っているため、
 意図的に見せない(または見ない)ようにしていたとも取れるが、
 少なくとも家族の後ろ暗い面についてはまーずの方がよく知っているようだ。
 まりな編の方が全体的に世界が明るく、まーず編が暗いのもそのせいかもしれない。

 

②家族への接し方の違い

 まりなの場合、ルーチンを繰り返す家族にアクションを仕掛ける側である。
 主体者はまりなであり、家族らの生殺与奪はまりなが握っているが、
 最終的に助かるのはまりな一人だけ(後にまーずも加わる)となっており、
 まりなにとって、家族は既に失われた存在だと自覚しているように見える。
 片腕を失った現実を受け入れられるかどうかも含めて、全ては自分次第という、
 実は、作中で最も孤独かつタフな人物である。

 対してまーずの場合、ルーチンを繰り返す家族らを助けるのは同じだが、
 まーずができるのは家族らを助けることだけであり、殺すことはできない。
 躊躇わずに家族を殺すことのできるまりなとは対極的と言える。
 まりな編では些か厭世的な発言が多かったとは言え、
 普段は植物を愛し、優しく、愛される人物のようだ。

 2人のスタンスの違いは、まーず編エンディングのシーンが顕著であろう。

 

③敵の違い
 まりな編では狂った父親・悪霊・人形遣い(およびDolly)といった面々と、
 自らの命を賭して戦うことになるが、
 まーず編ではJizoのみが相手で、悪霊・人形遣い(Dolly)とは一切戦闘にならない。

 人形遣いに関してはまりな編で両断されているためやむなしではあるが、
 おそらくこれは姉妹の境遇と、各々の受け入れるべき事実、
 それと対峙するスタンスが影響しているものと思われる。

 

 まりな編では、理不尽に自分の片腕を奪われたという現実と、
 いかにしてその事実を受け入れるかが命題となっている。
 性格上、暴力による解決に頼りがちであるまりなは、
 理不尽に負けた現実を取り戻すべく、夢の世界で、
 「自分より大きな存在(=理不尽の象徴)が襲ってくる。これをどう退けるか」
 という物語を作り上げたと推測できる。

 

 これに対し、まーず編では、自分は生きていてはいけない(死ななければいけない)
 という罪悪感と、それにどう向き合っていくかが命題となっている。
 まーずの持つ罪悪感は、家族および彼氏を死に追いやったことに由来しており、
 悪夢の世界から脱出するために、家族および彼氏との和解が不可欠となっている。
 それ故に、まーずは夢の世界で、
 「死の象徴(Jizo)が自分を連れて行こうとする。皆が止めてくれたので助かった」
 という物語を作り上げたと考えられる。

 

 まりなにとって悪霊は理不尽の象徴であり、戦わなくてはいけない相手だが、
 まーずにとっては家族と和解することが主目的であり、悪霊と戦う必要はない。
 そのため、まーず編では悪霊がほとんど登場しないのだ。
 (悪霊側も、自ら手を下さずとも、まーずは死を選ぶだろうと踏んでいた節はある)


登場人物まとめ

バッチャマからの評価、および真名を含む。

・Melody(まーず)

 

 主人公。人形遣いと刺し違えて行動不能になったまりなの代打。
 バッチャマの影響か音楽に通じており、ほんへではそれが色々役に立つ。
 バッチャマの曰く「きっと音楽の才能があるんだよ」とのこと。
 自殺願望と生存本能の間で葛藤している。

・Tabitha/Tabby(まりな)

 

 前主人公。まーずの姉。(バッチャマが「Big sister」と呼んでいるので、姉で確定)
 バッチャマによれば、
 「落ち着きがなく粗暴。常に騒動の種になるので、いなくなってせいせいしている」
 とのこと。
 真END後、人形遣いと刺し違えて行動不能になったが、まーずに救出される。
 当人の日記によれば、片腕は失ったものの、その後は元気に生きているようだ。

 

・James/Daddy

 

 姉妹の父親。
 バッチャマの曰く、「悪い子じゃないんだけど、少しばかり頑固なところがある」
 とのこと。
 バッチャマの発言から推測するに、バッチャマは虐待Jamesおじさんの母親らしい。
 まーずに助けられた後、Jizoに立ち向かって顔面を踏み潰されるが、
 結果として屋敷の地縛霊から脱却し、まーずの守護霊となることができた。

 

・Lisa/Mommy(KNN姉貴)

 

 姉妹の母親。
 まーず編では亡者と化し、酒に溺れる日々を繰り返している。
 アル中になった経緯は不明だが、まりな編でも飲酒描写があったため、
 素養はあったものと思われる。
 父親同様、まーずに助けられた後、まーずの守護霊となることができた。
 なんとバッチャマは話題にすら出さない。かわいそう。

 

・バッチャマ

 

 姉妹にとっては祖母にあたる人物。
 メロディを奏でることで出現し、以降は演奏しなくても午前2時から登場する、
 まーず編においては非常に重要なキャラクター。
 実はまりな編でも、ボウリング球を落としまくると少しだけ登場する。
 当人の曰く、バッチャマ自身はこの家を気に入っていたようだが、
 ジッチャマはこの家が気に入らず、出ていってしまったらしい。

 

・猫(課長)

 

 姉妹のペット。
 まーず編ではピアノルームの隠れ場所から一切動かず、
 唯一ピアノが自分で演奏をしている時だけ、外に出てくるようになっている。
 明確に死亡する描写はないが、助けない場合はクリア後の部屋に登場しなくなる。
 ちなみにこのゲーム、持っているアイテムによってキャラクターの反応が変わるが、
 まりな編でまーず人形を持っている時に話しかけると、少しだけ喋る。

 

・隣人

 

 まりな編での協力者であり、生還した姉妹の引き取り手。
 首が伸びる理由は不明だが、まりな編からまーず編に切り替わるシーンを見るに、
 蛇に類する何かのようである。
 「あの家に新しい家族が引っ越してきたみたいだから、明日からまた覗きに行くで」
 とクリア後の部屋で発言しているので、実は屋敷の守り神か何かなのかもしれない。


怪異まとめ

JizoとAkanameの出典は不明だが、姉妹のどちらかが妖怪に精通していたのだろう。

・Jizo(変態糞親父)

 

 Jizoの名の通り、迷える魂の救済が目的であり、
 その背に回収した魂(=顔)を大量に背負っている。
 決して悪い存在ではないのだが、有無を言わさず連れて行こうとする姿勢が
 まーずに悪印象を与えてしまったのは仕方ないことだろう。
 なぜ屋敷にやってきたのかは不明だが、近くに地蔵でもあったのだろうか?

 

・Akaname(トイレの神様/YUH姉貴)

 

 まりな編にも登場したトイレの神様
 なんとWikiによればジャパニーズヨーカイ垢嘗めらしい。
 だからトイレに居たのか。たまげたなあ。
 日本における垢嘗めは、垢を舐めるだけの無害な妖怪のはずなのだが、
 こちらは精神干渉したり、子供を丸呑みにしたりとわりとアグレッシブ。
 全くの余談であるが、Akanameを淫夢表記にすると「AKNM」である。

 

・Dolly改

 

 元はまーずの持っていた人形。
 かつて可愛がられていた過去があるため、まーずに対しては友好的。
 人形遣いに操られていた時はまりなを煽り倒していたが、
 人形遣いがまりなによってカチ割られた後、あの姿になった。
 当人にも操られていた時の記憶や、姿が変わってしまった自覚はあるらしい。

 

人形遣い

 

 まーず編では既にカチ割られた後で、会話にすらならない。
 左下にもぎ取られたまりなの右腕が落ちていたりする。
 屋敷の時間を止めていた張本人であり、まりながカチ割ったことによって、
 世界が動き出すようになる。屋敷が崩壊しつつあるのはそのせい。
 開始時点から時計に巻き付いていたり、
 午前4時以降、床下から突き破って出てきたりと、地味に嫌がらせをしてくる。

 

・クソデブネズミ

 

 まーず編では襲いかかってすら来ない、怠惰を貪るただのデブネズミ。
 サンドイッチを食べている間に、一緒に鍵まで飲み込んでしまったらしい。
 5匹子ネズミがいたが、1匹を残して全員死ぬか殺されるかした模様。
 なお最後の1匹も、まーずの行動によっては猫に食われてしまうのではあるが...
 ちなみに朝6時以降は寝てしまうため、クリア後に話しかけることすらできない。

 

・ゴムのアヒル

 

 まりな編ではトイレの棚の上にあり、ボウリング球を使うと取ることができる。
 カッチャマの曰く「そんなものあったっけ?」、
 悪霊の曰く「私のものじゃない」という謎のアイテムだったが、
 まーず編で新しいトラップ・怪異であると判明した。
 デザインから見て、おそらく元ネタは『遊星からの物体X』と思われる。

 

・謎の影くん

 

 エンディング直前、まりなを棒でツンツンしていた謎の影。
 何者なのか推測する材料すらないので、一切謎の存在。
 アップデートでいずれわかる時が来るのだろうか。


時系列

若干順番は前後しているかも。

・まりな一家、ゲームの舞台である屋敷に引っ越してくる
 ↓
・バッチャマ死亡(原因不明。おそらく天寿を全うしたものと思われる)
・まーずに彼氏(Toby)ができる
 ↓
・James、Tobyを監禁した上、暴行して殺害する
・Lisa、監禁の一件から酒に溺れるようになる
・Jamesによるまーずへの虐待が始まる
 ↓
・Lisa、何者かに殺害される(犯人不明)
・事態を悪霊のせいと考えたまりな、
 まーずと協力してJamesを止めようとするも、誤って殺害してしまう
・まりな、右手を失い入院
 ↓
・まーず、自殺を図り昏睡状態になる
 ↓
【ここからゲームほんへ】
 ↓
・まりな、悪夢の中で人形遣いを殺害した後、ショック状態から行動不能になる
 ↓
・まーず、隣人の助けにより意識を取り戻す
 (まりなの魂を借りた可能性が高い。意識のみでほぼ植物状態
 ↓
・まーず、Jizoを撃退し、まりなを助ける
・姉妹は昏睡状態から覚める
 ↓
【まーず編エンディング】
【まりな編真エンド】
 ↓
・姉妹は隣人に引き取られる


結局何だったのか

ストーリーを簡潔に説明するなら、
「自殺を図るまでに心に闇を抱えた少女が、
 臨死体験中に家族と和解して一命を取り留め、現実を生きていく自己受容のお話」
と、まとめることができる。
臨死体験話なんかでよく見られるストーリーである。

 

だがちょっと待って欲しい

まりな編もそうだが、まーず編が夢の世界での出来事であるとすれば、
あの世界を造ったのはまーず自身である。
だとすれば、人形遣いの配下だったDollyはさておき、夢の中の家族および彼氏は、
まーずが望むことを言うだけの操り人形に過ぎない可能性もある。

臨死体験中に普遍的無意識、またはアカシックレコードに触れた可能性もあるが、
まーず自身の、そうあって欲しいという願望も反映されたものと思われる。
そう考えると、わりと自己満足的なストーリーに見えるから不思議なものだ。


じゃあ俺はSteamに、新しいリョナゲーを探しに、行くから...